「ナノテラス稼働!日本の産業競争力強化に大きく貢献!」
~3GeV高輝度放射光施設NanoTerasuが稼働しました~
2024年4月1日 仙台市青葉区青葉山に「次世代放射光施設 ナノテラス」が運用開始しました。
運営にかかわる地域パートナーの一般社団法人東北経済連合会 部長 久保田篤様より「ナノテラス」について詳しくお伺いしました。
世界最先端の施設「ナノテラス」=巨大な顕微鏡
木村:東経連久保田部長 お忙しい中、NanoTerasu(ナノテラス)をご案内下さいまして誠にありがとうございます。
はじめに、あらためて次世代放射光施設ナノテラスがどんな施設なのか教えてください。
久保田:ナノテラスは、世界でも最先端の放射光施設です。
放射光という非常に明るい光によって物質をナノ(100万分の1ミリ)レベルで解析する施設です。
「巨大な顕微鏡」とも称されています。
木村:なるほど 「巨大な顕微鏡」ですか、なんとなく身近に感じることが出来ます。
放射光施設というのは、日本国内に他にもあるのでしょうか。
久保田:はい。世界に約50か所、日本には9か所あります。
施設規模も大小様々でそれぞれの施設に特徴もあります。
国内の施設では、兵庫県にある「SPring-8(スプリングエイト)」が有名です。
大型の放射光施設で周長1,436メートルと巨大です。
平成9年に供用が開始され既に27年が経過しました。
ナノテラスは、SPring-8のこれまでの運転経験等を踏まえて建設されました。
最新の施設で世界最高水準の性能を有します。
ナノテラスとSPring-8の違い
木村:世界最高水準の施設としてナノテラスが日本にあることは誇らしいですね。
SPring-8(スプリングエイト)との違いはどんなことでしょうか。
久保田:技術的な面では、得意とする解析分野が違うことです。
また、放射光施設の運営方法が全くと言って良いほど違います。
具体的には、SPring-8では、主に波長の短い「硬X線」と呼ばれる高エネルギーの放射光を使います。
物質の構造(内部のかたち)解析に適しています。
ナノテラスは、主に波長の長い「軟X線」と呼ばれる低エネルギーの放射光を使います。
物質の機能(電子の振る舞い)解析(可視化)に優れています。
触媒・医療・創薬・燃料電池など産業利用に活かされることが期待されています。
施設の運営方法は、
SPring-8や他の国内施設においては、国が管理(国予算で設置)し、
理化学研究所(RIKEN)や高輝度光科学研究センター(JASRI)が国から委託されて運営しています。
一方、ナノテラスは、建設・整備費用を国と地域・民間がほぼ半分ずつ負担し
運営も協力しあう「官民地域パートナーシップ」です。
国内で初めてこの方式で運営される国家プロジェクトです。
その結果、ナノテラスでの成果(実験結果)は一部を除き利用者が占有できます。
このことが産業界では大きな価値に繋がるものです。
なお、国側の運営機関は、
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)
公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)
地域パートナーは、
一般財団法人光科学イノベーションセンター(PhoSIC)を代表機関とする
- 一般財団法人光科学イノベーションセンター(代表機関)
- 宮城県
- 仙台市
- 国立大学法人東北大学
- 一般社団法人東北経済連合会 の5者です。
木村:なるほど。これまでの経験から得たことがナノテラスには活かされているのですね。
放射光とはなにか?
木村:放射光とは何か教えていただけますか。
久保田部長:放射光とは、ほぼ光の速度に加速した電子を磁石の力でその進行方向を曲げます。
曲げることで直線方向に取り出すことのできる細く強力な電磁波です。
この電磁波は、極めて高い輝度の光(X線)です。
太陽光の10億倍ともいわれる明るさがあります。
ナノテラスでは、電子銃によって放たれた電子を110メートルの線型加速器と、
電子を蓄積しX線を発生させる周長349メートルの円型加速器によって
光の速度まで加速させます。
木村:なるほど、この明るい光によってナノ(100万分の1ミリ)の世界を解析できるのですね。
放射光を“取り出す”ということですが、想像しにくいですね。
久保田:光速の光(X線)を取り出す…皆さんが「なるほど」と理解できるほどの説明は私もできません。(笑)
「磁石の力でその進行方向を曲げることで直線方向に取り出す」と先程申し上げましたが、
円形の施設内に取り出し口が全28箇所あります。
そのうち10箇所が完成しており、4月から実際に使用しています。
取り出し口に導いた光(X線)を物質に照射して構造や機能を解析します。
解析したいもの(こと)によって光の種類や解析の仕方が異なります。
それらに対応するためには多くの取り出し口と照射して解析する装置が必要になるのです。
取り出し口から解析する装置までをビームライン(BL)と呼んでいます。
「どんなことを解析したいのか」
「どんな課題を解決したいのか」
によって使用するビームラインが決まります。
ナノテラスの使用申込み以降、専任のコンシェルジュと技術支援者によって使用するビームラインを決定することになります。
現在完成しているビームライン10本のうち7本が地域パートナー所有です。
残り3本が国所有です。
ナノテラスで何が出来るか?
木村:ところで、ナノテラスではどんなことができるのですか。
久保田:ナノテラスは実験施設として運開したばかりです。
実績という意味ではまだ紹介できるものがありません。
SPring-8の実績をご紹介することで、期待されることのイメージが湧くのではないかと思います。
SPring-8の活用例としては、
「エコタイヤ」
「虫歯予防ガム」
「スマホ・ディスプレイ」
「革新型電池」
「シャンプー・リンス」
「インフルエンザ治療薬」など、
様々な分野で私たちの生活の利便性に繋がる物を開発するための物質の構造解析等に活用されています。
ナノテラスでも分野を問わない活用の可能性について期待されていることは勿論ですが、
物質の構造解析に加え、実運用に近い環境でのリアルタイムな観察≒機能解析(可視化)が期待されています。
この点はSPring-8との違いでもあります。
木村:なるほど、SPring-8は物質の構造解析を、ナノテラスは物質の機能解析という点がポイントでしょうか。
いずれ最新鋭施設としてのナノテラスは期待が大ですね。
ナノテラスを利用するための手続きは?
木村:それでは、ナノテラスを利用するためにはどのような手続きが必要になりますか。
久保田:大きく2つの方法があります。
コアリション(有志連合)制度のメンバー(会員)
一つは、コアリション(有志連合)という制度のメンバー(会員)になることです。
これには一口5,000万円の加入料金が必要です。
また別途従量制の利用料金(1時間当たり単価が設定)が必要です。
コアリションメンバーは、年間200時間の施設利用権が10年間確保できます。
利用して得た成果は全て占有でき、知的財産創出の面でも有益な点が大きなポイントです。
全てのビームラインを利用することが可能です。
国側の運営する共用利用に申請する
もう一つの方法は、国側の運営する共用利用に申請する方法です。
先ず利用申請を出し、事前の学術審査を受けます。
審査に合格したら国の利用条件に従い利用することができます。
審査には一定期間を要し、利用結果(成果)は公開することも条件です。
最小限の費用で施設利用ができますが、相応の条件があるということになります。
木村:施設の利用方法に関してもこれまで(特にSPring-8)の経験が活かされているのですね。
でも、コアリションメンバーになるための5,000万円は決して安いものではないように感じます。
これでは企業体力のある大きな会社しか利用できないのではないでしょうか。
久保田:ナノテラスの計画は、もともとは東日本大震災からの東北地域の復興を願い、2011年に生まれた「東北放射光施設計画」が起源です。
東北・新潟の中堅、中小企業の方々にもナノテラスを利用していただけるような枠組みもあります。
「ものづくりフレンドリーバンク(MFB)」制度
例えば、東経連ビジネスセンターでは、「ものづくりフレンドリーバンク(MFB)」制度を設置しています。
一口50万円の加入金と1時間あたりの利用料金で施設利用が可能になる枠組みです。
先に説明した「コアリション制度」の1/100縮小版で、加入金も1/100、利用権も1/100(年間2時間の施設利用権が10年間)です。
利用時間が不足した場合は、追加の利用時間を調整します。
その場合、利用料金がやや割り増しとなります。
また、東北大学では、東経連のMFBとほぼ似た「アカデミーフレンドリーバンク(AFB)」制度があります。
宮城県や仙台市においては、ナノテラスの利用に際した各種補助制度を用意しています。
興味・関心をお持ちの方は、制度主管の各地域パートナーにご一報ください。
木村:中小企業にとっては活用費用ですね!
また、東日本大震災からの東北地域復興がプロジェクトのきっかけとしてあったのですね。
ナノテラスが多くの企業や学術研究機関などから利用されるのですね。
東北・新潟はもとより日本の産業の国際競争力強化に繋がっていくことが期待されていることも分かりました。
後日、ナノテラスの“その後”についてまた聞かせていただければと思います。
本日はありがとうございました。
3GeV高輝度放射光施設 NanoTerasu様の「NanoTerasu共通広報素材」の「使用許可」を得た写真を使用しております。
執筆・撮影:株式会社オンリーワン経営 代表取締役 木村 淳
- 経営コンサルタント/医療コンサルタント歴25年超
- 職員数5000名クラスの法人とのコンサル契約20年超
- 2004年国際規格ISO/IEC27001(情報セキュリティーマネジメントシステム)審査員補研修を受講済み
- 2006年国際規格ISO/IEC2000(ITサービスマネジメントシステム)審査員補研修を受講済み
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